第13話「窪塚洋介との打ち合わせ」
- 豊田利晃
- 2021年4月12日
- 読了時間: 2分

昼に品川のホテルの中華料理店で窪塚と食事しながら打ち合わせする。脚本の意見、衣装、髪形など、お互いの意思をすり合わせする。映画に監督は映らない。映るのは役者だ。役者のメンタルが映画に映る。その気持ちを汲んで作っていく。重要な話は真っ先に済ませ、近況や息子の愛流のことなど話題は尽きない。お互い喫煙者なんで、一服のタイミングも同じで気が楽だ。映画に対してはストイックで真面目なところが自分とも気があうとこなんだなと思う。
打ち合わせが終わり、窪塚は別作品の脚本を読み直すと部屋に戻る。僕は外に出て駅へ向かって歩いていると知らない電話番号から着信が入っている。留守電を聞くと大阪の病院からだ。かけ直すと、兄が脳梗塞で倒れたと医者が言う。手術が必要だから親族の許可が欲しいと。両親は他界しているので僕しかいない。もし兄がいなくなったら誰が僕の手術の許可をだすんだろう。そんなことを考えながら増上寺を歩く。お参りをして、地下の宝物殿にいく。ここには篠田桃紅の巨大な壁画がある。その墨の線をなぞるようにゆっくりと歩く。一瞬、すべてのことが忘れられる。月ごとに変わる五百羅漢の絵を見ていると、過去の画家の途方もない祈りが聞こえてくるような気がする。
東京タワーに行き、友人のBJがやっている「ホセ・フランキー展」を見る。「東京タワーであいましょう」の企画、TTAをやりながら、事務所も東京タワーに構えたBJ。面白いことは行動しないと辿り着かない。友達ながら天晴だ。偶然、駐車場でブリティッシュアメリカンタバコのイベントがやっていて、窪塚のマネージャーの横田くんと会う。窪塚の弟のルイードもいる。なかなか、兄弟二人と同じ日に会うなんて、これは、いつか、そのうち、何かあるのかな?と楽しくなる。偶然の中に必然があり、完璧は偶然の中でしかない。
2021年4月12日 豊田利晃

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