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第19話「真っ赤な視界」

  • 執筆者の写真: 豊田利晃
    豊田利晃
  • 2021年4月24日
  • 読了時間: 2分

緊急事態宣言が命令されたが、俺たちはクランクインをする。前にも言ったけど、あいつら全員切腹だぜ。緊急事態の前にまずは聖火ランナーを止めろ。奴らはあの火を東京に運びたいだけだ。だから俺たちも映画の火を映画館に運ぶことを諦めない。お魚さんちに汚染水を撒きやがって寿司食うときに戸惑うじゃねえかよ。アラバキロックフェスが中止になった。なんて無念なんだろう。最大の注意を払いながら行われるフェスが成功することを期待していた。個人の行動を信じよう。不審の目を持つことをやめよう。この時代の中で楽しむ者に憎しみを抱くようなマスコミの流れを阻止しよう。憎悪の連鎖を断ち切ろう。身体と心を守りながら、知恵を絞り、今日を楽しむことを諦めないでいよう。

 昨日は窪塚洋介と渋川清彦の衣装合わせ。映画の映るその姿を目視で確認する。ようやくイメージが固まってくる。場所を移して、操演部のテスト。再び、真っ赤な赤が画面を覆うことを確認する。チーフ助監督は『鈴木家の嘘』の野尻監督。助監督が見つからず、過去作品で助監督を務めた野尻を呼び戻す。撮影は『破壊』『戦慄』の槇。三人で蛇の目寿司で打ち入り。日本酒一杯でフラフラする。明日から禁酒だな。京都の撮影所から小道具が運び出され、関東に向かってトラックが走ってくる。僕は今日、東京を離れ、撮影現場の近くで時を待つ。太陽の下、まぶたを閉じれば、視界は真っ赤に染まる。


                          2021年4月24日 豊田利晃

 
 
 

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